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第32章 帰還

　冷徹な機械のクリック音と共に、針は柚子の乳首を貫通し、あふれる血しぶきが周囲に飛び散る…

　……はずだった。

　「あ、あれ？？」
　「穴…開いてないですね…血も出てない。」

　「あ、この機械…針の部分は動かないようになっているじゃないか。お、お嬢様？これ、壊れてますよ…」

　千鶴は冷静に、そしてあきれたというような表情で、ふうとため息をついた。


　「もう皆さまったら。柚子ちゃんのこんな綺麗な体に傷をつけるようなもったいないこと。私が許すわけないでしょう？最初から、そういう風に細工しておきましたの。」

　そしてニヤニヤと男たちを少し小馬鹿にしたように微笑んだ。


　「あっ、そういう…いや…まあ、冷静に考えれば、そう、そうですね…なんだ…そうか。」

　ここまで散々柚子を怖がらせておきながら、その結果には何故か安堵のような空気が広がる。


　「けれども、柚子ちゃんには十分効果があったみたいですわよ？」

　そういわれて、男たちの視線は一斉に柚子に集まる。
　実際に乳首に穴を開けられてしまうことはなかったものの、柚子は憔悴しきったような表情になり、肩で息をしていた。

　ここまで何をされてもそれをすべて取り込んで自らの血肉にしてしまったような柚子であったが、最後の最後で恐怖のどん底に突き落とされたわけである。