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第39章 事態を収拾するには勇気が必要だ。いろんな勇気が。

　私は普段、社食でも窓際の席に座って一人で昼食をとる。
　が、なぜか今日に限って、山田が突然私の横に座ったのだ。

　「かちょ、なんかここんとこエライ深刻、っていうか超コワイ顔してることないすか？」

　脇に座るなり、そんなことを言い出す山田に、私は少し驚いた。
　私はそこまでひどい表情で、周囲に重苦しい空気をばらまいてしまっているのか、と。

　「ああ、そうなのか。こないだ病気でみんなに迷惑かけたばかりだってのに…申し訳ない。」
　「別に謝るようなことじゃないすよ。…でも、何かあったんすか？気になりますねぇ。」

　山田は探るようにこちらの顔を覗き込む。彼は賢いエンジニアである一方、空気を読まず人の内側にずかずかと入ってくるようなところがあった。
　だが、今のような状況ではそんな風に遠慮ない質問を浴びせられることに、私は少し救われる気がした。

　「…倒したい相手がいる。」

　私は少し冗談めかして、ことさらにマジメな表情を作って言った。

　「えっえーっ！なんすかそれｗ　ひょっとして、奥さん出てったことと関係あるんかな？」
　
　実際にはその通りだったが、そこは嘘でもきっぱりと否定しておく。

　「まあ、人には言えないこともありますよね。けど、桜井さん、いっつも俺らに言うじゃないですか。」
　「何を？」

　「んー…勝ち方？かな。」