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第58章 【番外編】　中学生妊婦の憂鬱 (終)

・桜井家／柚子の部屋


　６月も半ばとなり、あの事件からふた月ほどの時間が流れた。

　学園がそこそこ著名な進学校であったことで、ネットワークの世界でも現実の柚子たちの周囲でも当初は随分と騒ぎになったが、それも今や落ち着いてきていた。
　未だ家庭裁判所への出頭と証言を求められることがあり、それが煩わしい以外はほぼ元の生活に戻っていると言ってよい。

　季節は梅雨の時期に入り、毎日多湿な過ごしにくい日々が続いていたが、そんな中、柚子たちは一つのガラステーブルを囲んで黙々と勉学にいそしんでいた。
　
　「ふう…まったく…この数字の羅列…頭が痛くなるわ…」
　「ん？美羽は相変わらず数学が天敵ねｗそんなの、３元になってたってただの1次方程式じゃんｗ」

　「う、うるさいわね。わかってますわよそんなこと。…に、苦手だから必死にやっていますのよ。」

　「ふーん。どうでもいいけど、もうその変なしゃべり方辞めたら？ｗもう女王様になんか戻れないんだから。」


　少女たちの次の戦い、それは受験戦争である。


　本来であればそんな心配もない中高一貫の学園であったはずだが、彼女たちはもうあの学園で更なる３年間を過ごす気には到底なれなかったのだ。