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第18章 母であっても…

　そこに立っていたのはただの通りすがりであったのだろうが、30がらみの、すこしヒョロリとした背の高い男であった。

　整った顔立ちをしているものの、年の頃の割りに頭髪は極端に薄く、上下ジャージにメガネというその風体も相まって若干哀れな容貌とも言えた。

　今誘いをかけてきている男たちと比べるまでもなく地味なその容姿は、しかしまっとうな種類の人間だろうと思わせるだけの効果がある。


　人は見かけで判断してはいけない、が、今どちらを信じるかといえばジャージ男のほうが信じられそうだ。

　女はそう判断し、つかまれた手を振りほどいてジャージ男に駆け寄った。

　そこで、女はジャージ男が自分の見知った男であることに気付く。

　「あっ、可美村先生…？」
　「えっ？…えっと…あなたは…」


　「真知子、桜井真知子と言います。先生のクラスの桜井柚子の母ですわ。」