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第26章 変わってしまった日常で、果実は売られる

　「そりゃあなったさ。お母さんのファンデーション塗りたくっていったけど、形が変わっているのは隠し切れないからなあ。なんで今更そんなことを聞くんだ。」
　「最初は何となく聞きづらかったんだよ…すっごく痛々しかったから…」

　そこは本音なのだろう。娘は申し訳なさそうに私のほうを見た。
　
　実際のところ、会社での私の評価は最近全体的に下降気味だ。
　妻が出て行ってしまったということで最初は同情的だった周辺の空気も、あまりに早く帰る日が続けば冷たいものに変わっていく。
　明らかに殴られて変形している私の顔も、周囲の不審を生んでいた。


　しかし、だからと言って華からのメールを無視したり、今日は遅くなる、なんて断ろうものなら、そこから何十件と連続して着信やライン未読が入ってくる。

　ちょっと狂気じみたその華の行動の向こう側に、あの鬼の形相が私には見える。そうなるともう心臓がギュッと握り潰されたようになって、そのあとの仕事は手につかなくなってしまうのだ。

　そんな毎日に、少しづつ私は疲れを感じ始めていたが、それでももう少し華が落ち着くまでの辛抱だろうと、周囲の冷たい視線になんとか耐え続けていた。