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父と娘の近親相姦日記 第2部 暴走編
第27章 群がる蟻たち
 それは彼女自身が柚子の警戒を予測して、あからさまな格好を選んだ結果であったが、そんなことは柚子にはわからない。
 お嬢様って本当にああいう格好するのねえ、と感心と呆れを伴ったような奇妙な安心感を得て、柚子はトコトコとその女性に向かって歩いて行った。

 「こ、こんばんは…桜井柚子です。」
 「うふふ。いらっしゃい。綾辻千鶴です。」
 「あ、あの…この度はお世話になります…」

 異常な状況から始まった関係であっても、面と向かえば人としてごく普通なやり取りから始まる。礼儀正しく腰を折って頭を下げた柚子に、千鶴も帽子を取って同じく頭を下げた。長い髪の毛が躍ると、あたりに甘い香りがふわっと広がる。

 「本物はやっぱり数段かわいらしいわねえ。」
  
 そこにはもちろん、柚子の顔かたちが可愛いという意味も含まれていたが、ジイ・ウーやヴィーゴあたりを頑張って可愛らしく組み立てたと思しきその着こなしも、色々な意味で、「お嬢様」からは可愛いと映るのであろう。

 だからその言葉には世辞が含まれていたわけではなかった。
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