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父と娘の近親相姦日記 第2部 暴走編
第29章 人形とさして変わらないわたし
 赤い球と黒いベルトのギャグボール、猿ぐつわのようなものである。
 それをされてしまえば口を閉じることは出来ず、もう言葉で抗議することは出来ない。はががが、と呻く口にボールを押し込まれたのち、ベルトはしっかりと柚子の頭の後ろで固定され、これまた鍵をかけられてしまう。


 準備を済ませた男たちが去ると、木の下に柚子はひとり残された。

 遥か遠くに綾辻の家が小さく見える以外に、建物らしきものは見えない。この場所はほんの少し小高い丘になっているから、道の彼方も目にすることはできなかった。

 日差しは強くとも、11月にもなれば沖縄の風もそれなりに涼しい。よく晴れた空の下の木陰で、柚子は風景と共にその環境をむしろ快適に感じていた。妄想での放置とは若干心境が異なるようだ。

 もっとも、木の根元に打たれた30cmくらいの杭に鎖の先は固定されている。
 鎖は十分な長さが用意されていなかったから、柚子はそれでもう立ち上がることは出来なくなっていた。
 快適な環境とはいえ、犬のようにつながれて放置されている状況はやはり普通ではない。

 「立てないし…どんな格好でいればいいんだろ…」
 
 四つん這いになって待つなんてのも一人でするのはバカバカしいし、結局は横座りで手を後ろにつくという恰好で柚子はそよぐ風を浴びていた。


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