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透明犯罪捜査官 美荻野凛々香の非日常
第2章 ―多賀瑠偉人の非日常―
「要求通り、美荻野凛々香に透明ドラッグを飲ませて情交したな」
「……見ていたのか!」
職場で周囲を憚って押し殺した瑠偉人の声が強張る。しかし、携帯電話の相手はいたって平静な口調だった。
「見ていたというか、見えていなかったというか……まあ、気にするな。とにかく、お前が約束を守ったということは確認した」
「じゃあ、あの動画は……」
「まだだ。ちゃんと最後まで要求の通りに進めてもらわなくてはな。美荻野凛々香を透明ドラッグでのセックスに溺れさせる、それが条件だったはずだ」
「クッ……俺に彼女を裏切り続けろというのか……」
「裏切る? それは何のことを指して言っているのだ? 私がお前に裏切らせているとでも? 最初から彼女を裏切っていたんじゃないのか、お前は? それに、お互い愉しんでいたように見えたぞ。いや……見えてはいなかった、がな」
それで通話は一方的に切れた。
「クソッ……」
(どうしてこんなことに……)
人目がなければ頭を抱え込んで蹲ってしまっている所だ。
昨夜、瑠偉人が凛々香にOCDを飲ませるときに言ったマンネリ防止というのは口実だった。実は脅迫されてのことだったのだ。
脅迫者の正体は不明。ある日突然、メールが送られて来て、添付の動画を公開されたくなければ言う通りにしろと要求されたのだ。
その動画とは、瑠偉人と、その実の妹、春名との情事の一部始終だった。
身から出た錆――そう言ってしまえばそれまでだった。瑠偉人と春名の禁断の肉体関係は、誘惑に負けた三年前から今に至るまで――そう、凛々香と付き合い始めてからも――続いていた。
「……見ていたのか!」
職場で周囲を憚って押し殺した瑠偉人の声が強張る。しかし、携帯電話の相手はいたって平静な口調だった。
「見ていたというか、見えていなかったというか……まあ、気にするな。とにかく、お前が約束を守ったということは確認した」
「じゃあ、あの動画は……」
「まだだ。ちゃんと最後まで要求の通りに進めてもらわなくてはな。美荻野凛々香を透明ドラッグでのセックスに溺れさせる、それが条件だったはずだ」
「クッ……俺に彼女を裏切り続けろというのか……」
「裏切る? それは何のことを指して言っているのだ? 私がお前に裏切らせているとでも? 最初から彼女を裏切っていたんじゃないのか、お前は? それに、お互い愉しんでいたように見えたぞ。いや……見えてはいなかった、がな」
それで通話は一方的に切れた。
「クソッ……」
(どうしてこんなことに……)
人目がなければ頭を抱え込んで蹲ってしまっている所だ。
昨夜、瑠偉人が凛々香にOCDを飲ませるときに言ったマンネリ防止というのは口実だった。実は脅迫されてのことだったのだ。
脅迫者の正体は不明。ある日突然、メールが送られて来て、添付の動画を公開されたくなければ言う通りにしろと要求されたのだ。
その動画とは、瑠偉人と、その実の妹、春名との情事の一部始終だった。
身から出た錆――そう言ってしまえばそれまでだった。瑠偉人と春名の禁断の肉体関係は、誘惑に負けた三年前から今に至るまで――そう、凛々香と付き合い始めてからも――続いていた。