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透明犯罪捜査官 美荻野凛々香の非日常
第2章 ―多賀瑠偉人の非日常―
    ※    ※    ※

「お兄ちゃん……あたし、お兄ちゃんのこと……好きで、好きで、どうしようもないの……」

 あの日、そう切り出した春名は卒業式から帰宅してきたばかりで、まだ制服も着替えていなかった。卒業証書を入れた筒さえ手に持っていたのを憶えている。思い出せないのは自分がどういう受け答えをしたかだ。

「わかっているよ……いけないことだって。でも、もう気持ちが抑えられないの! おかしくなりそうなの! どうすればいいのか……わからないの」

 帰省中の実家の自室。二階建ての高さの窓からは通りの並木の満開の桜。

 薄桃色の光に染められて、透明感のある春名の肌が少し赤く染まって見える。本気の眼差しに真っ直ぐに見つめられ、瑠偉人は金縛りにあったように固まった。

 女とは、離れていた数ヶ月足らずでこんなにも大人っぽくなるものか。子供だと思っていた妹の体から発する目に見えない何か。まとわりつく淫靡な空気が、瑠偉人に嫌でも異性を感じさせる。

「ねえ……どうすればいいの? どうしたらいい? お兄ちゃん……」
 迫る、女の体。襟元から抜かれたリボンの紐がシュルリと音を立てる。

「教えて……」

 胸に当てられる華奢な両手。思わず、引き寄せるようにして腰を抱き寄せてしまったのが過ちの第一歩だった。

 塞がれる唇。押し倒されるようにしてベッドの上へ。もどかしく脱ぎ捨てられるブレザー。外されるベルトの金具のカチカチいう音。散らばる下着。
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