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透明犯罪捜査官 美荻野凛々香の非日常
第2章 ―多賀瑠偉人の非日常―
「お兄ちゃんに恋人ができたことを祝して……カンパーイ!」
「お、おい……」
大学生と社会人になっても、春名との関係は終わらず、進学して上京した春名が、瑠偉人の部屋を訪れる度、情事は重ねられていった。
罪の意識を持っているのは瑠偉人だけで、春名には近親相姦の後ろめたさなぞどこ吹く風のようだった。それどころか、部屋を掃除したり手料理を振る舞ったり、完全に女房気取りで嬉々として瑠偉人の世話を焼くのだ。
凛々香との出会いは、そんな二人の関係を絶つ機会となると瑠偉人は考えていたのだが、恋人ができたことを告げる重い口ぶりに対し、返ってきたのは意外な祝福の言葉だった。
「だって、お兄ちゃんのことを好きになる人なんだもん、きっと良い人だよ」
二人掛けのソファに並んで腰掛け、春名が茶化すように肩を瑠偉人の肩にぶつける。だが、それにはどこか痛々しさがあった。ソファの前のガラステーブルの上の、春名が持って来た大きなバレンタインチョレートコが目に入る。
「お兄ちゃんは優しいからさ……きっと、その人……凛々香さん? 凛々香さんもそこが好きになったんじゃないかなあ~」
「お前なあ……俺が言いたいのはそういうことじゃなくて……」
話の流れが思ったようにならなそうなのを見て、瑠偉人が軌道修正しようと口を挟む、だが、春名は間髪入れずに言葉を継いで瑠偉人を遮った。
「春名もお兄ちゃんの優しい所が一番好きだよ。いっつも春名の味方してくれたよね……お父さんやお母さんに叱られたときも……あと、ホラ……憶えてる? 小ちゃい頃近所にいた意地悪な子……あの子にいじめられたときだって。だから春名、お兄ちゃんが警察に受かった時も、絶対ピッタリの仕事だって思ったもん! だって、お兄ちゃん、誰にだって優しいもん……だから、きっと良い警察官になるって……お兄ちゃんはずっと、優しいままだって……は、春名は……思ってるもん」
「春名……泣いているのか?」
向かい合う妹の頬に、小さな光る物。
「お、おい……」
大学生と社会人になっても、春名との関係は終わらず、進学して上京した春名が、瑠偉人の部屋を訪れる度、情事は重ねられていった。
罪の意識を持っているのは瑠偉人だけで、春名には近親相姦の後ろめたさなぞどこ吹く風のようだった。それどころか、部屋を掃除したり手料理を振る舞ったり、完全に女房気取りで嬉々として瑠偉人の世話を焼くのだ。
凛々香との出会いは、そんな二人の関係を絶つ機会となると瑠偉人は考えていたのだが、恋人ができたことを告げる重い口ぶりに対し、返ってきたのは意外な祝福の言葉だった。
「だって、お兄ちゃんのことを好きになる人なんだもん、きっと良い人だよ」
二人掛けのソファに並んで腰掛け、春名が茶化すように肩を瑠偉人の肩にぶつける。だが、それにはどこか痛々しさがあった。ソファの前のガラステーブルの上の、春名が持って来た大きなバレンタインチョレートコが目に入る。
「お兄ちゃんは優しいからさ……きっと、その人……凛々香さん? 凛々香さんもそこが好きになったんじゃないかなあ~」
「お前なあ……俺が言いたいのはそういうことじゃなくて……」
話の流れが思ったようにならなそうなのを見て、瑠偉人が軌道修正しようと口を挟む、だが、春名は間髪入れずに言葉を継いで瑠偉人を遮った。
「春名もお兄ちゃんの優しい所が一番好きだよ。いっつも春名の味方してくれたよね……お父さんやお母さんに叱られたときも……あと、ホラ……憶えてる? 小ちゃい頃近所にいた意地悪な子……あの子にいじめられたときだって。だから春名、お兄ちゃんが警察に受かった時も、絶対ピッタリの仕事だって思ったもん! だって、お兄ちゃん、誰にだって優しいもん……だから、きっと良い警察官になるって……お兄ちゃんはずっと、優しいままだって……は、春名は……思ってるもん」
「春名……泣いているのか?」
向かい合う妹の頬に、小さな光る物。