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透明犯罪捜査官 美荻野凛々香の非日常
第1章 ―美荻野凛々香の日常―
 こういったものへの意見を最初に口にするのは誰でも尻込みしがちなものだが、そこは年功序列の縦社会たる警察組織らしく、わきまえて自らトップバッターとなったのはルーキーの多賀瑠偉人だった。

「CMの中で男性だけが犯罪者として登場するのはどうなのでしょうか? 女性の透明犯罪もあるわけですから」

 透明犯罪の男女比は男が女を圧倒する。それでも、瑠偉人の指摘したように女の透明犯罪がないわけではない。

 そして、痴漢やのぞきなどの軽犯罪が大部分を占める男性に対して、女性の場合は傷害や殺人などが主たる犯罪内容を占めていた。腕力のなさを透明化が後押しするのだろう。

 瑠偉人が言っているのは、そういうことについてもフォローするべきではないかという意味だ。

「10秒という時間なら仕方ないのではないかしら。それとも多賀君は裸で街を歩く女性の姿をお茶の間に流せというの?」

 混ぜっ返したのは、同僚の美荻野凛々香だった。

 24歳。若輩ながら、多賀より一年先輩にあたる捜査官で、透明犯罪捜査課開設以来のメンバーである。

 キビキビ、ハキハキとした物腰同様、曖昧さのないハッキリとした表情をする凛々香が、悪戯っぽい笑みを浮かべて瑠偉人をじっと見つめる。

「い、いえ、そういう訳じゃ……」

 優男の瑠偉人の甘いマスクが困惑に歪む。意地悪を言われたせいではない、突き出すような凛々香の胸に一瞬目を奪われたのを誤魔化すためだ。夏服のブラウスの下に、微かにブラが透けて見える。

(ピ、ピンクか……?)
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