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透明犯罪捜査官 美荻野凛々香の非日常
第3章 ―都議・酒倉の非常識―
「だいたい、ワシは選管のほうにも、もう何度も足を運んどるのや……今更アンタらにお話せなならんようなことは何もありませんのやで」

 酒倉徳二は今日ものらりくらりとした受け答えで事情聴取には非協力的な態度だった。

 取調室で向き合う凛々香は、内心の不快感を務めて顔に出さぬよう聴取を進める。

「酒倉先生、公職選挙法違反についてお伺いしているのではありませんよ。私たちがお尋ねしているのは、猥褻物陳列、並びに薬事法、透明犯罪法違反に関することなのです」

「そやから、そんなもの知らんっちゅーとるがな!」
「ですが、秘書の方は先生の指示でと……」

「そしたら何かい! ワシが嘘でもついとるっちゅうんかい! 侮辱や! こりゃ、名誉棄損や! 姉ちゃん、アンタ、名前なんちゅうんじゃ……美荻野凛々香……フン、名前だけは可愛らしいのお! いや、失礼……よう見たらけっこうなベッピンさんや。だが、態度がアカンわ。そんなんやったら嫁の貰い手もあらへんのやろ?」

 最後の方は好色そうな目つきでジロジロと凛々香の胸の辺りに視線を這わせながらの酒倉の御託。

(……どっちが名誉棄損よ!)

 凛々香は腸が煮え繰り返る思いだった。そうでなくても、この脂ぎった狒々爺は始終、まるで凝視すれば着ている服が透けると信じているかのように、凛々香の体をいやらしい目つきで舐めまわすのだ。

(絶対に許さない……この男が一体どういう風にしてあの娘たちを誘ったのか……考えるだけでも寒気がするわ)
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