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透明犯罪捜査官 美荻野凛々香の非日常
第3章 ―都議・酒倉の非常識―
(……誰が貴方みたいなエロ親父の秘書になんか!)

 捨て台詞を残して退散する酒倉を背中に、凛々香は心の中で毒づいた。

「でも……逆に言えば、ああいう態度は追い詰められていることの証でもあるわね。打つ手なしで虚勢を張っているだけ。証拠さえ揃えばあとは……」

 正義の裁きを受けさせるだけ。

 と、そのとき、取調室のドアが開いて課長が顔を出した。

「美荻野君、終わったかね?」
「はい。相変わらずでしたが……」
「そうか、フム……」
「何かご用ですか?」
「うん。片付いたら課長室まで来たまえ、少し話がある」


    ※    ※    ※


 退勤後、署内の道場には乱取りに打ちこむ柔道着の凛々香の姿があった。

 一緒に帰りがてら、悩みを聞こうと瑠偉人を探したのだが見当たらず、携帯も繋がらない。その心配に輪をかけて、課長から告げられた、心乱されるあの話――体をクタクにすれば、頭が空っぽになって落ち着くかと、稽古に来たのだ。

「……せいっ!」
「どうした、どうした! 集中が足らんぞ、美荻野! たるんどるっ!」
「はいっ……もう一本っ! お願いしますっ!」
「よし来い!」

 ズダーンッ!

 迷いは技にも表れる。凛々香は何度も、何度も、畳に叩きつけられた。その度に道着の下で乳房が大きく揺れる。

「……ありがとうございました!」

 散々だったが、それでも目的通り体力を使い果たした凛々香には、心配事を思い煩う余力は残っていなかった。

 更衣室に戻り、続きのシャワールームへと向う。ザッという水音と共に、火照った体から汗が洗い落とされる。豊満な胸の谷間に出来上がる幾筋もの渓流。水滴に打たれる心地良さにうっとりと目を閉じて、凛々香はその手を肌に滑らせる。泡立つボディソープの感触が心地良い。

 ようやく、落ち着いた気持ちで課長の話を思い返すことができそうだった。
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