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透明犯罪捜査官 美荻野凛々香の非日常
第5章 ―美荻野凛々香の非日常―
「瑠偉人……」
「ね……してみせてよ」

「わかった……す、するわ……でも、見ちゃダメよ。あっち向いてて……絶対よ」

「オーケー。手は放した方がいい?」
「ダメ! 放さないで!」
「はい、はい……ハハッ、可愛いなあ、凛々香は!」

 心臓が破裂するぐらいドキドキする。今まで裸で夜道を歩いてきただけでも恥ずかしかったのに、往来で排尿行為をするなんて。透明ドラッグを飲んでいなければ、例え瑠偉人の頼みだったとしてもできないだろう。

 凛々香はしゃがみ込んだ。膝の上で乳房がひしゃげる。

「だ……誰も来てない?」
「来てない。大丈夫だよ。僕らだけだ」

(それでも……ああっ……は、恥ずかしい……)

 目を閉じて尿意に意識を集中せる。尿道に込み上げて来る熱い感触。そして握りしめた手の中の瑠偉人の温もり。

「見てないよね? あっち向いてる?」
「向いてるよ……」

 透明な瑠偉人が本当に見ていないかどうかを確める術はない。だがどっちにせよ、高まった尿意はもう止められない所まできていた。

「ン……」

 尿道に込み上がる排泄の甘い感覚。凛々香の唇から小さな声が漏れ、睫毛が震えた。

 ち……ちょろ……ちょろっ……ちょろろろろろろろろ……

 道路の数センチ上の空間から、一筋の水流が姿を現した。黒々とした水たまりが、その放物線の着地点にみるみる広がっていく。

「あははっ……凄く出てるね!」
「……み、見てるの?」
「見てるよ……凛々香のオシッコが広がってく所、見えてるよ」
「嫌あっ! 見ちゃダメって……言ったのに!」

 ちょろろろろ、ろろ、ろろろろろろろろろ……

 見られている! そうわかっても止めることができない。最愛の人に放尿を鑑賞されてしまっている。羞恥がカッと凛々香の体を火照らせる。

(あ、あ、ああああああ……止まって、早く止まってえっ! 嫌っ……嫌あっ)

 心の中でそう叫びながらも、凛々香には微かな自覚があった。己の肉の内に、新しい種類の官能の疼きが芽生えつつあることに。
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