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君は僕のものだった
第1章 君は僕のものだった
 君をとおして、ぼくは、愛されているような、そんな気がしたんだ。
 ごめんね。
 ぼくは君を愛してなんかなかったし、君から愛されたいわけでもなかった。
 それなのにぼくは・・・。


「って!いやいや!そんなシケた顔はやめましょう!虚しくなります!誰も悪くないんです!こんなふうになったのはすべてわたし自身のせいなんです!」


 君をこんな女にしたのに、それなのにぼくは・・・。


「わたしがいけないんです!カラダの発育が早かったわたしが悪かったんです。やらしい雰囲気を漂わせていたらしいわたしが悪かったんです。ぜんぶ、わたしが悪いんです。自業自得なんです。だから、そんなシケた顔はやめましょう!ね、わたしね、こんなだけど、マジ子供のことは可愛いし、ほんと、命っていうか・・・子供が生まれてきてくれてね、ほんとに、救われたの。そりゃ、汚いオヤジとヤラないとわからない時もあるよ。パパに抱いてもらわなきゃ、頭がおかしくなりそうなくらい虚しくなる時もあるよ。大好きだって言ってもらわなきゃ、愛してるって言ってもらわなきゃ、お前だけだって言ってもらわなきゃ・・・でも」


 ぼくは、君にほんとうのことを話すつもりもなくてさ。
 そうだ、さっきの話の続きをするよ。
 ぼくは君のお母さんを殺すつもりだったんだ。
 本気だったんだ。
 君だって覚えてるだろ?
 君のお母さんの再婚相手が君を犯していたと、君がぼくに告白した晩のこと。
 ぼくは、あの男にあんな酷いことをするつもりはなかったんだよ?
 ぼくは、どうしてそんなことをしたのか問い詰めてやりたかっただけなんだ。
 なのに、あの男が包丁なんて野蛮なものを取り出したから、自分の身を守るために、あんなふうに、不本意なかたちで、殴ったりしただけ。
 そうだ。よく考えたら、あの男は、どうしてあんなことをしたんだろう。
 そんなにぼくの目は、危なく見えたのかな。


「子供たちのことだけはね、ほんとうにね、心の底から、愛してるって思えるの。大事だって、かけがえのないものだって、思えるの」




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