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君は僕のものだった
第1章 君は僕のものだった
「早く帰ってあげなきゃいけないからさぁ・・・ぜんちゃ・・・あ、一番うえの子なんだけど、善ちゃん。2歳になるのに超絶ママっ子でやばくてさぁ。パパにあんま懐いてなくて日々苦労してんのよ。もしかしたらすでに泣いてるかも」


 帰ったあと、君がぼくの態度に腹を立てて、ぼくの頭に写真立てを投げつけるまでは、ぼく、本気で、この部屋に住んでいたあの女を殺しに行くつもりだったんだ。
 だから、妊娠したこととか、そのほかのことは、殺したあとで落ち着いて話をすればいいかーって考えていて、上の空だったから、君のはなしをちゃんと聞いてなかったかもしれない。
 だから妊娠がわかって不安に駆られていた君は深く傷付いて、ぼくから逃げて、君が二股をかけてたあのヘンタイのところに出て行ってしまったんだよね。
 あのヘンタイは暇な人間だから、君の話をいつだって聞いてくれるもんね。
 泣いてる君の髪を撫でて、ヨシヨシとか、大変だったねとか、そういう、君が言って欲しいようなことを言ってくれるもんね。
 ぜんぶわかってたんだよ。
 君の気持ちくらい、あのヘンタイの心理くらい、わかるよ。
 知らなかったろ。


「・・・もしかしたら、今日、一緒に連れてきたほうがよかった?」


 ぼくはやっぱり、君がうらやましかった。
 ぼくじゃなくても、君を愛してくれる人がいたんだから。
 ぼくには、あの女しか、いなかったのに。


「なんていうか・・・会いたくないかなとか思って。だって、わたし勝手にあんなことしてさぁ・・・今考えたら、すごい勝手なことしたよね。でもあのときはそれしか考えられなくて・・・そう言ってくれるなら、嬉しいけど」


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