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君は僕のものだった
第1章 君は僕のものだった
 むかし君と2人で水族館に行ったろ。
 さっき君も言ってた、ほら、君の10歳の誕生日に行った、ほら。
 海のちかくにあった、あの水族館だよ。
 もうとっくの昔に閉館したみたいだけど。

 あの近くでいい部屋があったから、そこに決めたんだ。
 海の近くに住んでみたいって小さい頃から思ってたから。
 通勤に片道2時間も掛かるのにバカみたいだよね。
 でもそんな中二病を一度でいいから患ってみたくて、仕方なかったんだ。
 そんなバカで無意味なことに、一度でいいからお金を遣ってみたかったんだ。

 でもね、海の近くって住むもんじゃないよ。
 潮風が吹くからね。
 洗濯物が外に干せないんだよ。

 同じことを、あいつも言ってたよ。


「・・・ほんと?ほんとのほんとだよ?ぜったいだよ?」


 目線がぼくよりちょっと下くらいで、髪が短くて、目の細い、日に焼けた、君とはまるきり違うタイプの、背の高い、ぼくと同い年の女。
 あ、むねも君よりずっと小さいかもしれない。

 あいつは近所の老人ホームで働いてて、趣味でフットサルをしててさ。
 その帰りとか、早朝にランニングしてんだってさ。
 海岸沿いをさ。
 
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