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君は僕のものだった
第1章 君は僕のものだった
「ときどき、かわいそうになるよ。このひとたち、モノでしか愛情を表現できないのかなーって。うーん、上手く言えないんだけど・・・」


 どうしようもないことだって、分かっていたのに。


「ほんとは、長男として家を継いで欲しいみたいな欲望しかなくてさぁ、その代価としてモノを与えるわけ。・・・わたし?わたしは長男を生んだから、もう実家にとっての役割は果たしてるから、超かわいがってもらってるよ。智恵子さんはなんもせんでいーから子供だけ生んで!とか言って、超姫扱い。ある意味ラッキーかな?でも、なんていうのかなぁ・・・家族ってなんなんだろうって、最近改めて考えちゃうんだー」


 分かってたのに。


「ほら、うちはさぁ、お父さんが死んじゃってて、お母さん1人だったじゃん?お母さんはあんな人だったから、家事とか料理とか家のこと全然しないし。あ、そうだ。ねぇ、覚えてる?わたしが小学生のときのこと。1年生か2年生のときかな?遠足の日にさ、なんにも用意してくれないお母さんの代わりにおにぎり作ってくれたでしょ。あれさ、すっごく嬉しかったんだけど、でかすぎてクラスの子に超バカにされてさー。あれ今思えば自分が学校に持ってってたのと同じサイズだったんじゃない?あの日からだよ。このウチではわたしが料理をしよう!って決意したの。あはは!」


 こんなふうに彼女はぼくの前でいつも明るく笑っていてくれたけれど。
 でも、ぼくは、彼女が15歳だったときに、なにもかも嘘だったんだって、知ってしまったんだ
 あの女はそんなわけないって笑ったけれど、それが嘘だと、ぼくは知ってしまった。
 あの、ほら、彼女もいつか中学の時の友達と行ったはずだ。
 お菓子をくれたって笑ってた。
 ぼくも行ったんだ。彼女が行くずっと前のことだけど。
 彼女の指先のひび割れや、10歳のときにみたのと、同じ色を必要とする、ほら・・・。

 なのにぼくは、彼女を手放せなかった。
 そして、あの女からも、離れられなかった。
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