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お慕い申し上げて居ります
第2章 連絡
いや、夢ではない。現実でしかなかった。

「ほら、行くよ」

朱里の背中をトンと押される。

勿論まだ学校の前にいるわけだから、変な気持ちを起こしてはならないのだけれども、朱里はさっきからの動悸に続いてもはや息が切れそうだった。



「新谷駅周りだと都合が悪いから代間川(ダイカンガワ)駅近くのカフェでも行こう」

流れに身を任せるしかない朱里。

自分が望んできたような出来事ばかりが目の前で繰り広げられ、先生の後を追って大人しくついて行く他に選択肢はなかった。



代間川駅はお洒落だった。早くも、カップルや友人同士が談笑しながら歩いている。

「ここに入ろう」

「はい...」

某世界規模チェーンのカフェに入店し、先生はミルクティ、朱里はホワイトモカを頼んだ。



「「頂きます」」

まだ寒さが残る3月中旬に似合う程良い暖かさの飲み物が染み渡る。

「おいしいですね」

「うん」

「...」

また、沈黙。



「坂井さん、ずっと応援してたよ。改めておめでとう」

「恐縮です...。でも本当に嬉しい」

「それは良かった」

「はい」

また沈黙しそうな雰囲気。
と、そこで中田が思い切って口にした。

「あのさ」

「?」

「僕、わざわざこんなとこに連れてきたのはさ、応援してたって言いたかっただけじゃなくて、...」

男子校育ちでしかも男子だらけの理系学部に進学し、そのまま教師職に就いた中田には、とても言いにくい言葉。

「何ですか?」

先程とは打って変わってリラックスしきった朱里の目が中田の緊張した目を捉える。

中田は思い切った。

「好き...」

「...」

朱里の頬がカァと熱くなる。

「先生、今なんて」

「ごめん...好き...」

「本当ですか?」

中田も真っ赤になってこくこくと頷く。
もう目が合わせられない。




朱里はすぐに答えを出した。

「私も。
お慕い申し上げております」



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