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お慕い申し上げて居ります
第3章 交差
「それは、その、今からってことですか?」

「うん」

朱里は迷わなかった。
小声で、中田に近付いて、鼻と鼻の先が5cmぐらいになる距離まで近付き応える。

「先生なら、良いですよ」





先程も断ったように、中田は本当に今まで女性と親密になる機会を、全くと言っていいほど持ち合わせていなかった。

従って、そういうことの手順もいまいちよく分からない。

「えと...僕の家に来るか?」

「良いんですか?」

「ホテルとか取ってないし」

「ふふ、取ってたら準備良すぎてびっくりですよ」

「だよね。じゃあ...一緒に帰ろう?」

「ぜひ」



二人はカフェを出て、タクシーを拾い中田の家へ向かった。





タクシーの車内はとても緊張していた。

ナイーブな若いカップルというよりは、寧ろ仲が悪いベテランカップルなのかと思うぐらい。

それを和らげるために朱里はそっと自分の手を中田の手に重ね合わせる。

「照れる...」

言葉に反する大胆な動きに中田は少し驚いて言う。

「朱里はこういうの慣れてるの」

「いや...恋人ができたのも初めてですよ」

中田の耳元と言っていいのか分からない程度の微妙な近距離から囁く。

「良かった...」

「どうしてですか」

「僕だってこんなの初めてだし、28歳が18歳に先越されてたら恥ずかしい」



甘い雰囲気になりつつ他愛ない会話をしているととうとう中田の家に着いてしまった。


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