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改訂版◆散る華如く
第1章 すべての出逢い
「・・・っ!!」
その笑顔は、どこか既視感を感じさせた。
「・・・?どうかしたのですか?」
眉を訝りに寄せた杏沙に、しをなは問う。
「いや、何でもないよ。」
そうは言ったものの、彼の心は不穏な騒ぎをみせていた。
(まさか、俺といろはの仲間・・・?)
「しをな、あんたは呉服商のおかみさんの娘なの?」
「―母と妹は・・・先日の火事で亡くなりました。」
彼女は冷たく感情の見えない、虚ろな瞳(め)をして言った。
「え・・・?」
「わたしはその時、お使いに行っていて・・・でも、わたしが帰ってきたときにはもう・・・」
彼女は唇をかんだ。
小さく、儚い身体が―哀しみをこらえていた。
「放火だったの?」
「―はい。白藤屋で働いている藍さんが言うには、何者かの仕業だって・・・」
しをなは頬を伝い始めた雫をぬぐうこともせず、ふっ、と苦い笑みを浮かべた。
「父のいないわたしにとって、母と妹は何よりも大切な家族でした。でも、今は・・・」
それでもなお、気丈に微笑もうとする彼女の身体を
杏沙は優しく抱き寄せた。
「俺もね、父さんは物心ついたときから居なくて、実の母に吉原に連れて来られたんだ・・・」
優しく髪を撫でながら、杏沙は語り始めた。
「貴方のお母さんが、何故・・・?」
「俺の家はひどく貧しかった、だから仕方ないことだったんだ・・・」
「―この言葉を聞いたことがある、しをな?“神は乗り越えられる試練しか与えない”って・・・」
彼はハッとした様子のしをなが唇を開く前に続けた。
「いつか、時がたてば・・・あんたの哀しみが思い出に変わるよ、俺がそうだったから。」
「でも今は・・・好きなだけ泣けばいいよ。」
その一言に、堰を切ったように泣きはじめるしをな。
彼はしをなが泣きやむまで、黙って髪を撫でていた。
その笑顔は、どこか既視感を感じさせた。
「・・・?どうかしたのですか?」
眉を訝りに寄せた杏沙に、しをなは問う。
「いや、何でもないよ。」
そうは言ったものの、彼の心は不穏な騒ぎをみせていた。
(まさか、俺といろはの仲間・・・?)
「しをな、あんたは呉服商のおかみさんの娘なの?」
「―母と妹は・・・先日の火事で亡くなりました。」
彼女は冷たく感情の見えない、虚ろな瞳(め)をして言った。
「え・・・?」
「わたしはその時、お使いに行っていて・・・でも、わたしが帰ってきたときにはもう・・・」
彼女は唇をかんだ。
小さく、儚い身体が―哀しみをこらえていた。
「放火だったの?」
「―はい。白藤屋で働いている藍さんが言うには、何者かの仕業だって・・・」
しをなは頬を伝い始めた雫をぬぐうこともせず、ふっ、と苦い笑みを浮かべた。
「父のいないわたしにとって、母と妹は何よりも大切な家族でした。でも、今は・・・」
それでもなお、気丈に微笑もうとする彼女の身体を
杏沙は優しく抱き寄せた。
「俺もね、父さんは物心ついたときから居なくて、実の母に吉原に連れて来られたんだ・・・」
優しく髪を撫でながら、杏沙は語り始めた。
「貴方のお母さんが、何故・・・?」
「俺の家はひどく貧しかった、だから仕方ないことだったんだ・・・」
「―この言葉を聞いたことがある、しをな?“神は乗り越えられる試練しか与えない”って・・・」
彼はハッとした様子のしをなが唇を開く前に続けた。
「いつか、時がたてば・・・あんたの哀しみが思い出に変わるよ、俺がそうだったから。」
「でも今は・・・好きなだけ泣けばいいよ。」
その一言に、堰を切ったように泣きはじめるしをな。
彼はしをなが泣きやむまで、黙って髪を撫でていた。