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琥珀色に染まるとき
第12章 幸福な憂心のまま

 胃の中がからになるまで吐き続けたあと、ふらふらとベッドに戻った。どさりと身体を投げ出し、そのまま目を閉じる。

「…………」

 自分なりに、過去と向き合ってきたつもりだった。

 二十歳で大学を中退してボディーガードを志したことは、あの事件で負った心の傷を克服し、同じ境遇に苦しむ人々を護るため、自らに設けた試練だった。事件が起こるまでなにも知らずにいた父はひどく困惑し、大反対したが、それを押しきって警護専門学校に入学した。
 友人や恋人とは自然と疎遠になったが、哀しみは心の奥に押しこんだ。涙や感傷とは縁を切り、自分の気持ちを殺した。自分には大切な人との別れを憂う資格はないのだと言い聞かせて。そうでもしなければ、過去を克服し、女である自分が他人を護ることなどできないと思った。

 恐怖の底に突き落とされそうになっている人を少しでも多く救えるよう、自分こそは強くあろう。そうかたくなに信じて生きてきた。すべては、護られるべき誰かのために。
 だがそれは、認めたくない事実に蓋をして逃げてしまった、弱い自分自身を護るためだったのかもしれない。


――りょ、こ……ちゃ……。


 暗い廃墟に漂って消えた、あの小さな声が頭から離れない。これまでに何度も、あの六月の日の夢を見た。そのたびに、何度も彼女に謝った。
 しかし、いくら悔やんでも、現実と向き合っても、この罪悪感から解き放たれることは叶わないのだろう。
 彼女に許しを請うことは二度とできないのだから。彼女はもう、この世にいないのだから。

「真耶さん……っ」

 涼子はベッドの上で丸くなり、その名を小さく叫んだ。

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