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琥珀色に染まるとき
第13章 忘却の片時雨

 深く息を吐いて再びソファーに歩み寄ると、景仁はのろのろと腰を下ろした。ふと、左側からそっと肩にもたれてくる柔らかなぬくもりがよみがえる。それをふりはらうようにソファーに仰向けに寝転び、片手で顔を覆った。
 この瞬間にも、身体は彼女のぬくもりを求めている。失いたくない。だが、自ら去っていく彼女を追う資格は、自分にはない。

 そばにいれば、涼子を傷つけてしまうのだろうか。想い続けることは罪なのか。そう自問したところで、答えを導き出すことはできない。たとえできても、その答えの正否は誰にもわからないのだろう。


――ほかの誰が非難しても、俺はしない。


 不意によぎった藤堂の言葉に、景仁は口元を歪めた。

「ばかだな……」

 もし――と景仁は思った。もし、この縁を繋いでくれたのが真耶だとしたら、すべての出会いに意味があったと思えるような気がする。西の地平線に沈んだ太陽が、再び東の空へ昇るように、その奇跡は必然なのだと。

 事実を知り、現実と向き合い、自らの中に真実を見出したとき、人は初めて前に進むことができる――。

「そういうことだよな……」

 閉ざされた視界の中で、力なく嘲笑しながら誰に言うでもなく吐き出した声は、震えていた。


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