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琥珀色に染まるとき
第14章 MY FOOLISH HEART

――泣きながら眠ったあの日、何度も目が覚めてはそのたびに失望し、虚無感に襲われてまた目を閉じた。結局、ベッドから出ることができたのは窓の外が完全に暗くなってからだった。
 熱いシャワーを浴びて意識をはっきりさせてから、簡単な晩食を作って食べた。心を静めるためにキッチンでコーヒーを淹れていたとき、ふと携帯を見るとメールが届いていた。

 差出人は、西嶋だった。
 妙に落ち着かない気分でメールを開いたが、そんな胸中に反してその文面は簡潔なものだった。
 これから買い出しにいって開店準備を始めるという内容と、最後にこう添えられていた。

――くれぐれも無理だけはしないように。いつでも好きなときに連絡しておいで。

 電話でなくメールだったのは、彼の気遣いだ。わかっていながらも肩透かしを食らったような気分になり、画面に表示されたその文字列を、涼子は悄然と見つめた。

 せめて礼だけでもと思いメール作成画面を開くも、寂しさに襲われて声が聞きたくなり、電話帳で彼の番号を表示させ、それをただぼんやりと眺める。そんな調子でなにも手につかず、ぐらぐら揺れる矛盾した気持ちを必死に抑えながら朝までの時間をやり過ごした。
 焦燥感と鬱屈した心情をかき立てられ、身も心もまったく休まらない休日――こんなことなら仕事をしているほうがましだと思った。

 そしてとうとう返信できないまま、そろそろ四ヶ月になる。
 でもそれでよかった、と涼子は思う。あのことを知りながら何事もなかったように接することなどできないし、もう会えないとわざわざ伝えることも、それに対する反応を待つのも煩わしかった。そんな反応、返ってこないほうが気が楽だ。

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