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琥珀色に染まるとき
第14章 MY FOOLISH HEART

 素直は身体は、裸の彼と抱き合った瞬間、はっきりとその感触を思い出した。
 だがそれと同時に、涼子は少しだけ恐怖を覚えた。このまま求め合うままに身体を重ねたら、どうなってしまうだろう。

「……涼子」

 そんな不安は西嶋にはお見通しのようで、心配そうに見下ろしてくる。

「大丈夫か」

 なにも返せずに見つめていると、視界の中でその顔がにじんできた。彼が苦笑して、おもむろに抱きしめてくる。

「今日は、ずっとこうしていようか」

 耳元でそう囁かれた瞬間、無性に寂しくなった。理由はよくわからない。彼の身体も、自分の身体も、こんなに熱いのに、どうしてそうやって優しく熱を冷まそうとするのか。そう思ったら、とたんに哀しくなった。

 涼子は、西嶋の首元に頬をすり寄せた。

「いやっ、そんなの……」
「涼子」
「西嶋さん……」

 彼は目を見開いたあと、切なげに眉を寄せる。

「いや、いや……」

 涼子は何度も言いながら、ばかな女、と自分を罵った。しかし、もうどうしようもなかった。

「涼子……」

 一瞬、彼は苦しげに顔を歪めると、いいのか、と静かに言った。
 その真剣なまなざしを受けて、涼子は思った。彼は、最後の最後に、彼から逃げる選択肢を自分に与えてくれたのだと。あと一度でも身体を繋げてしまえば、もう逃げられない。それでもいいのか――そう言っている。

 ここに来るまでの間、彼も心の中で葛藤していたのだろうか。あんなに激しくキスを交わしても、互いにほぼ生まれたままの姿で抱き合っている今も、彼はなにかと闘っているのかもしれない。
 だが、彼ももうわかっているはずだ。目の前にいる女がなにを望んでいるのかを。

「西嶋さん……好きなの」

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