この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
琥珀色に染まるとき
第16章 青い薄闇に埋もれて


第十六章 青い薄闇に埋もれて




 左の薬指を撫でられた感覚が、三十分経った今も、まだ残っている。

 西嶋に見つめられながら、そのぬくもりに左手を包まれていたのは、たったの五分間だった。入り口の扉の開く音が新たな客の来店を知らせた瞬間、その長い指は名残惜しそうに薬指を撫でて離れた。まるでそこに指輪をはめるような動きをして……。
 そこに言葉はなく、ただひたすらに真剣なまなざしを向けられた。あの行為に深い意味があるとしたら。気のせいでなかったら。そう考えるだけで、戸惑いと悦びに心が叫び出しそうになる。

 チェイサーを挟みつつ、お気に入りのカリラの香りを愉しみ、ホワイトチョコレートの塩気を舌の上に感じながら、心が静まるのを待つ。客たちの相手をする西嶋の声とシェイカーの音に耳を澄ませると、鼓膜が甘く痺れ、頭の中にじんわりと癒しが広がった。

 そうしていよいよ意識がゆらゆらと浮遊し始めた頃、近くの席にいる客が席を立った――。

「……涼子」

 思いのほか近くで聞こえたその低い声に驚き、完全に閉じていたまぶたを開く。愛おしい気配を感じて右側を向けば、隣に座る西嶋が優しく微笑んでいた。

「終わったよ」
「え、もう?」
「ああ。待たせて悪かったな」

 ふと違和感を覚えて腕時計に目を落とす。時刻はまだ〇時五十分だった。すでに店内に客はなく、BGMも消されている。

/429ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ