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琥珀色に染まるとき
第21章 記憶の中の彼女を

「行くぞ」

 小林の声で動き出した、三人の男たち。

 背の低い運転手の男と、助手席に座っている身体の大きな男が降車する。助手席の――浅黒い肌と大きな図体が威圧感を感じさせる、まるで野獣のような――男が、後部ドアから腕を伸ばして涼子の髪を引っ張り、外に引きずり出した。意識を失っている間に両手を後ろで縛られていたようで、バランスを崩した涼子は、湿り気を帯びた枯れ葉の上に転げ落ちた。
 三列シートの最後部座席には、明美の隣に狐面の男が乗っており、嫌がる明美を無理やり降ろす。ひょろりとしたその体格が、気味の悪さを際立たせている。

「ほら、早く立て!」

 濁った太い声を張りあげた大男に肩を掴まれ、涼子は操り人形のようによろりと立ち上がった。

 吐く息は白く、コートを着ていても刺すような冷気が染みこんでくるのがわかる。月明かりと男たちの持つ懐中電灯を頼りに、渓谷に続く石の階段を降りていく。さきほどまで雨が降っていたのか、階段を埋めつくす枯れ葉はやはり濡れていて、前を行く明美が足を滑らせた。

「きゃっ!」

 彼女は危うく転ぶところで、錆びて今にもぼろぼろに崩れそうな鉄製の手すりにしがみつく。

「さっさと歩け!」

 小林が彼女の腕を取り強引に引っ張りあげると、涼子も後ろにいる大男に肩を押された。階段を降りた先には、あの廃墟が見える。
 下まで降りた六人は、木々に覆われるようにして佇む廃れた建物の前にたどりついた。何十年と取り壊されることなく、今もこうしてひっそりと存在し続けるそれは、森と一体化したような、不思議な空気を放っている。

「ここだな。大学生だったあんたが犯された場所」
「……っ」

 小林の失笑混じりの言葉に、反射的に握ったこぶしが震える。縛られた手首に硬いロープが食いこんだ。
 なぜ、この男が知っているのだろう――。悔しさと憎悪で全身が震え、鼓動が暴れる。

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