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琥珀色に染まるとき
第21章 記憶の中の彼女を

 不気味な笑みを浮かべる男たちに連れられ、光の及ばない闇へと足を踏み入れた。がらんとした廃墟内を奥に進む。靴裏がコンクリートの上に残った砂利をつぶす音が響く。壊れた天井の穴から月明かりが差しこみ、どこからともなく水がしたたる音がする。
 誰からも必要とされなくなった空間に、物言わぬ湿った空気だけが漂っている。そこにひそむ記憶の闇に全身を覆いつくされるようで、足がすくみ、呼吸が浅くなる。

 痛むのは頭だけではない。心が、引き裂かれるように痛い。

「さあ、戒めの時間を始めよう」

 陶酔しきった声をあげ、小林が両手を高く振り上げた。身構えた女たちに気づいた小林は、そばに立つ明美を涼子のほうに突き飛ばすと、ほかの男たちとともに薄ら笑いを浮かべながらじりじりと歩み寄ってくる。その瞳の中に宿る、穢れた欲の色を隠そうともせずに。

「やめなさい。執行猶予中に捕まれば、実刑は免れないわよ」

 後ずさりしつつ厳しい口調で制止を求めるも、そんなものは怖くないとでも言うように、男たちは近づいてくる。張りつめた空気に少しでも亀裂が入れば、少しでも隙が生まれれば、一気に均衡が崩れてしまうような危うい間(ま)を、息を殺して保つ。
 そのとき突然、明美が小林の腕にすがりついていった。

「雅人、もうやめて……言うとおりにすれば、助けてくれるって言ったじゃない!」
「うるせえ! お前が勝手にこの女にボディーガードを頼むからいけないんだろ」

 ひどい形相で声を荒げた小林は、明美を思いきり投げ飛ばした。

「明美さん!」

 地面に尻もちをついた彼女を追って涼子もしゃがみこみ、今にも殴りかかってきそうな小林を鋭く睨みつけて牽制する。

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