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琥珀色に染まるとき
第24章 THE NEARNESS OF YOU

肌寒さを覚え、寝室に戻った。分厚い掛布団の下には、横を向いた寝顔が見える。
音を立てないように旅行鞄を開け、奥に忍ばせてある小さな箱を取り出す。ふたを開けて思案し、今ではない、と結論づけると、また閉じて鞄に戻した。
抱きついてきたままの体勢で眠る彼女を再び抱きかかえるようにして、ベッドにもぐりこむ。
腕の中で、涼子が身じろぎした。
「う、んん……」
鼻にかかった甘ったるい声のあと、その顔が上を向いた。寝ぼけ眼にとらえられ、視線が絡む。
「起きたか。おはよう」
「おはよう。今何時?」
「さあな」
「さあなって……」
「いいだろ、時間なんて」
「でも」
「親父たちは出かけたから、もう少しこうしていよう」
「もう……」
呆れる彼女も自ら時間を確認する気はないようで、そのまま動こうとしない。
「今日はなにをしよう。買い物でもするか」
長い艶髪をすくように撫でながら尋ねると、彼女はひっそりと笑う。
「あなたとこうしていられるだけでいいの」
「一日中? 体力がもたないよ」
「なに言ってるの……ばかね」
また呆れられてしまった。こういうとき、なぜか無性に幸せを感じる。
――お兄さんの幸せがあの人と一緒にいることなら、黙って見送ります。
――幸せになっていいのかしら、私。
ふと、実耶と涼子の言葉が重なった。

