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琥珀色に染まるとき
第26章 琥珀色に染まるとき

ひと月前に新設されたばかりの、「ストーカー対策課」。涼子が休養から復帰する際、上司と社長に直談判して設置にこぎつけた。この春から警護員として中途採用された藤堂とともに課を任され、体調と相談しながら業務を軌道に乗せるために日々奮闘している。
ストーカー対策課とは、その名のとおりストーカー被害に悩む依頼人を対象に警護やカウンセリングをおこなう部署である。これまでの業務と違うのは、精神科医などの専門家と連携することによってストーカー被害に特化した業務が可能となり、より迅速で専門的なケアをおこなうことができるようになったことだ。主に藤堂が警護、涼子がカウンセリングを担当し、被害に苦しむ人々を徹底的に護る。
しかし、ただ護るだけではない。依頼人が希望すれば三者での話し合いを設けることも検討しているので、これまでよりもストーカーと関わる機会は増えるだろう。
それを知った西嶋はひどく心配していたが、『俺がいるから心配いらない』と言った藤堂の確固たる自信に免じて、静かに見守ってくれている。
扉を三度ノックすると、応接室の中から間延びした返事が聞こえた。失礼します、と短く発して中に入れば、そこに見えたのは化粧気のない素直な笑顔。
明美こと、木村小夜子。胸の下まであった長いストレートヘアは肩まで切られ、髪色も暗くなっている。
「涼子さん! 会いたかったあ!」
「久しぶりね、小夜子さん」
「あ、藤堂さんも……こんにちは」
「なんだ、急におとなしくなって。気味が悪いぞ」
「ひどーい」
藤堂に言い返した小夜子は、以前のような明るさを取り戻しているように見える。事件後から医療機関でカウンセリングを受けていた彼女とは今日まで電話で何度かやりとりをしてきたが、こうして直接顔を合わせるのは三ヶ月ぶり――小林の裁判に証人として出廷したとき以来だ。

