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琥珀色に染まるとき
第26章 琥珀色に染まるとき

 強姦致傷などの罪で起訴された小林には、裁判員裁判により懲役六年の実刑判決が下された。その仲間たちも、罪名や量刑に差はあるものの、全員が実刑判決を受けた。
 裁判が終わると、小夜子は故郷へ帰ることを決めた。今日彼女がここに来たのは別れの挨拶を交わすためだ。地元で新しい仕事を探し、また一からやり直したいのだという。

 彼女の人生はこれからだ。いくらでも生き方を変えることができると、涼子は信じている。

 奥の広いソファーに座る小夜子の向かいに腰かける。
 白いシャツにジーンズというシンプルな着こなしは、スナック勤めしていた頃の彼女とはまるで別人のようだが、より彼女らしさを際立たせているように思える。

「小夜子さん、なんだか顔色がいいみたい」
「今は朝起きて夜寝る生活してるからね。人は太陽を浴びないとだめなんだってよくわかった。涼子さんの旦那さまはやっぱりすごいよ。身体壊さずにいられて」
「そうね。本当にタフだと思うわ」
「ねえ……涼子さんは、この仕事続けるの?」
「…………」

 涼子は左手薬指におさまるマリッジリングに触れてその存在を確かめてから、心配そうな視線をよこす小夜子へ静かに微笑んだ。

「私にとってこの仕事を辞めることは、彼らを許してしまうことになるの。許してしまえば、犯罪を受け入れることになる。彼らの犯した罪を受け入れるなんて、私にはやっぱりできないから」

 それを真剣に聞く小夜子の瞳が、なにかを思い出したように色を変えた。そのまなざしを真っ直ぐに受け、涼子は続ける。

「もちろん、人を許さずにい続けることは苦しいことよ。ときには許すことが物事の解決に繋がることもあるし、許すことで自分自身が救われたりする。だけど、犯罪を解決できるのは許しではないの」

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