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琥珀色に染まるとき
第6章 静寂とホットウイスキー


第七章 静寂とホットウイスキー




 六月二十九日水曜日、午前〇時四十分。

 正義が自らを滅ぼすのだと、思い知らされたことがある。それでも、自分の正義を諦めたくはない。この日が巡ってくるたびに、そう強く思う。


 涼子がタクシーを降りたとき、視界に入ったのはよく知っている女の横顔だった。女は明るいストレートヘアを振り乱しながら、なにかから逃げるように雑居ビルの中に消えた。

 間違いない。あれは明美だ。

 一週間前に契約を交わし、明美の身辺警護はすぐに開始された。彼女が自宅を出てからスナックの仕事を終えて帰宅するまで、徹底的に護衛しながら周囲に怪しい影がないか目を光らせてきたが、今のところあの男の姿は確認できていない。
 休みの日はほとんど家にこもっているという明美の希望で、警護は彼女の勤務スケジュールに沿っておこなうことになっている。勤務のない日には、基本的に警護はしない。だが、一人で外出する際にはGPS発信機を携帯してもらい、その動きを常に見守ることを約束している。

 スケジュールによると、昨日、今日と休みのはずだ。GPSを確認するも、彼女の住むマンションから動いた形跡はない。本来なら自宅にいるはずの彼女がなぜここにいるのだろうか。まさか発信機を忘れてきたのか。
 しかも、明美は裸足だった。靴は走っているうちにどこかで脱げたのだろうか。もしそうだとしたら……?

 不可解すぎる状況に、頭の中で女の勘とボディーガードの勘が一致した。そうなれば、やるべきことは一つしかない。自らの直感を信じ、涼子はビルの外にとどまることを決めた。

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