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戦国ラブドール
第5章 壊れたドール
「吉継に借りてた手拭いを返しに来たんだよ。夕方からの仕事は、まだ勝手場に入れてもらえないんだから出来ないんだ。まずは掃除からだってさ」
「ふん……まあいい。その程度の用なら、俺が預かってやる。こっちは取り込み中なんだ、物だけ置いて早く帰れ。うろちょろして、人に迷惑を掛けるな」
やはり棘のある言い方をするが、それは吉継にも「よろしく」と言われている。気持ちのいい対応ではなかったが、気にせずに手拭いを差し出した。
「吉継にも礼を言っといてくれ。じゃあね」
「……ちょっと待て」
すぐに帰ってほしいと言わんばかりの態度だったにも関わらず、突然佐吉は大海の手を掴んで引き止める。そして大海の目の前に縄の痕が付いた手首を突き付け、訊ねた。
「この痣は何だ?」
「これは――仕事、で」
大海はしどろもどろに答えるが、佐吉は聞かずに手を引き、中へと連れ込む。痣よりも佐吉が掴む手の力の方が痛くて大海は顔を歪めるが、佐吉は気付かず進む。
「吉継! お前なら何かいい薬を持っているだろう、出してこい」
部屋の中では、吉継が碁盤の前で腕組みして座っていた。