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戦国ラブドール
第5章 壊れたドール
「薬って……あれ、大海? どうしてここに」
「あ、ああ。この前借りた手拭いを返しに」
「そんな世間話は後にしろ。吉継、早く薬を持って来い」
ここは吉継の家であるにも関わらず、佐吉はまるで自分が主のように振る舞う。だが吉継は特に気にせず、大海をじっと見つめた。
「薬って、なんの薬? 怪我なのか病気なのかも分からないのに、持って来いって言われても困るよ。ああ……でも」
吉継は立ち上がると、大海の頬に手を伸ばす。女と見間違えそうな顔をしていても、手は男らしく骨張っていた。
「元気のない顔をしてる。何かあった?」
顔を合わせるのは二度目のはずなのに、吉継はまるで全てを見抜いたかのように訊ねる。だが、大海の中を渦巻く思いは、とても口に出せるようなものではなかった。
「吉継、これを見れば分かるだろう。この女は怪我をしている。何か薬はないのか」
佐吉が痣のある手首を突き出せば、吉継の眉間に一瞬皺が寄る。だがすぐに平静を装うと、首を横に振った。
「こういう傷は、薬じゃどうしようもないよ。時間で自然に回復するのを待つしかない」