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戦国ラブドール
第5章 壊れたドール
吉継を座らせると、佐吉も向かいに座る。大海は村にいた頃、父親の相手としてよく碁盤の前に座らされていた。佐吉の後ろから屈んで覗いてみれば、吉継の言う通り投了も間近の、一方的な盤面であった。
「……ここは? ここに打つしかないんじゃないか?」
つい口を挟めば、佐吉は眉間の皺を深める。振り向き文句をこぼそうとするが、目の前には大海の豊かな胸が飛び込む。
「――うるさい、俺の後ろに立つな!!」
「あ、ごめん。失礼だったね」
「まったく、迷惑極まりない。正座して反省しろ!」
顔を赤くした佐吉は怒鳴ると、自分の隣に大海を座らせる。吉継は一人にやけ顔で、二人のやりとりを見ていた。
「お前、囲碁が分かるのか?」
「あ、ああ、父が囲碁好きで、よく付き合わされていたから」
「女のくせに変わっているな。囲碁など、農民にはなんの役にも立たないだろうに」
「役には立たないかもしれないけど、楽しいじゃないか。頭を使うのは、嫌いじゃない」
「ふん、そんなに言うなら、実力のほど、見せてもらおうか」
佐吉は大海が示した場所へ打ち、吉継に目配せする。すると吉継は、迷う事なく次の一手を打った。