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戦国ラブドール
第5章 壊れたドール
「……どうして、そんな事言い切れるのさ」
「君の事なら何でも分かるから。でも僕の言ってる事、あながち間違いじゃないよね?」
大海は言い返せず押し黙る。確かに今大海は悩んでいるが、小夜が大海へ責め苦をこぼした事など一度もない。今日だって遠巻きにされて涙ぐんでいたが、恨み言は一切言わなかったのだ。
「……誰がどう思っても、あたしはあたしが許せないんだよ。怖い目に遭って、あたしは小夜を守るより、自分が苦しくない方を選んだ。そんな自分が、小夜にどんな顔を合わせればいいのか分からないんだ」
怖い目、それが手首に付いた痣と関係しているのは、隣で聞くだけの佐吉にだって分かる。小夜を守れないと嘆く気持ちは理解出来ても、それを責める事など二人には出来なかった。
「……怖いのは、駄目なの?」
「え?」
「何を怖いと思うかは、人それぞれだけど。怖いと思わずに生きている人なんているのかな? 君の妹は、そんな当たり前の感情を抱くのも許せないような子なの?」
「あの子は、何も言わないよ……でも、あたしは小夜を傷付けた共犯者だ。許されていいはずがない」