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戦国ラブドール
第6章 讒言
 
 大海の目の前には、見知らぬ男が立っていた。虎之助を凌ぐ背丈と、筋骨隆々とした体格。雄々しい顔には、大きな傷の痕がある。山賊かと思ったが、身なりはきちんとしている。武士である事に、間違いはなかった。

「――っ」

 大海は声を上げようとするが、大柄な男は大海の口を布で塞ぎ、片手で持ち上げる。小夜に手を出す気はないようで、のしのしと外へと歩き出す。男は片手だというのに、大海が暴れても全く揺らぐ様子はない。為す術なく、大海は男に連れ去られてしまった。

 だが男は外ではなく、城内に向かう。そして大海が立ち入りを許可されていなかった奥の部屋の中に入ると、大海を放り出し口を塞いでいた布もすぐに外した。

「な……なんなんだい、あんたは! 城の武士なら、人攫いみたいな真似をしないで呼びつければいいだろう!」

 城内に連れてきたのだから、男は羽柴の武士なのだろう。年は見たところ吉継や行長と同じように見えるが、纏う気配が彼ら子飼いとは違う。数々の修羅場をくぐり抜け、生死を見つめてきた瞳。つい噛みつくような物言いをしてしまったが、大海の体は微かに震えていた。
 
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