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戦国ラブドール
第8章 紅天狗(べにてんぐ)
「お、お姉ちゃんに変な事しないでっ!」
声は震えているが、小夜の声は力強い。女の力で高虎から大海を離す事は出来なかったが、驚かせるには充分だった。
「へぇ、お前、俺に喧嘩売ってんのか。そんな小さくて弱っちいくせに」
「け、喧嘩なんて……ううん、わたしだって、お姉ちゃんを守るんだもん!」
顔は青ざめているが、小夜は引かない。すると高虎は大海から手を離し笑い声を漏らすと、小夜の肩に傷だらけの手を置いた。
「なるほどな、それは立派な心掛けだ。あんまり似てないかと思ったが、お前らは根っこじゃ姉妹なんだな」
「え……?」
「よし、じゃあ行くか。城でいつまでぐだぐだしてても、答えは出ないだろうからな」
高虎は機嫌良く、門番へ声を掛ける。小夜は力が抜けたのか大海に抱きつくと、涙混じりの声を上げた。
「怖かった……お姉ちゃん、大丈夫?」
「小夜、ありがとうね。あんたみたいな良い子が妹で、あたしは幸せだよ」
勇気を出した小夜に心を打たれ、大海は小夜の頭を撫でる。朝日に反射する小夜の黒髪には、確かな月の輪が宿っていた。