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戦国ラブドール
第8章 紅天狗(べにてんぐ)
 






 長浜の城下町は、かつて近江を治めていた浅井長政が居城としていた小谷城の城下を移したものである。近淡海の豊かな水で繁栄する人々の顔は明るく、町は賑わっていた。

「ねぇお姉ちゃん、村とは違って、いっぱいお店とか家があるね。田んぼとか畑とか見当たらないよ」

「そういえば田畑がないね。そっか、それが大きな町ってもんか」

 郊外には畑もあるだろうが、中心である街道には建物がひしめいている。店を構えている人間はもちろん、桶を担ぎ路上で商売をする者も多い。この城下は、見ていて飽きが来ない町だった。

「大海さん、小夜さん。近江と言えば、その地名の通り近淡海が最大の見所です。となれば名物は魚、特に鮒寿司なんかは有名ですわ」

「城と近淡海が繋がってるから、籠城した時便利そうだね。いざとなれば、釣りでもすれば食べ物には困らなそうだ」

「海と言っても塩水じゃないですから、水にも困りませんよ。どうです、長浜はいいところでしょう?」

「まあ……豊かなのは違いないね。つい数年前まで、争いが起こってた地とは思えないよ」
 
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