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戦国ラブドール
第8章 紅天狗(べにてんぐ)
 
 大海が何気なく呟くと、虎之助が慌てて大海の口を塞ぐ。そして耳元で呟いた。

「大海、高虎さんの前であんまり浅井の話はするな。今でこそ高虎さんは秀長様の家臣だが、元は浅井の人間だったんだ」

 だが高虎は空気で悟ったのか、小さな溜め息をついて虎之助の肩に手を置く。

「気遣いはいらないぞ、虎之助。俺はどの家に仕えている時でも、いつでも全力だった。後ろ暗い事なんか何もない」

「でも、高虎さん……」

「むしろ、主君を変えてこその武士だろう。生きているからこそ、俺は秀長様という最高の主君に出会えたんだ」

 しみじみと語る高虎に、虎之助は尊敬の目を向ける。武勇を誇る高虎と、いつか武功を上げたいと望む虎之助。二人の間に流れる空気は、決して悪いものではなかった。

「けど高虎さん、俺は主君を変える必要はなさそうです。秀吉様が、俺にとって最高の主君ですから」

「そう思うなら、まずは戦に備えて鍛える事だな。お前達の成長は、秀長様にとっても良い事だ」

 すっかり大海と小夜が置いてけぼりにされると、行長が二人にこっそり声を掛ける。
 
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