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戦国ラブドール
第8章 紅天狗(べにてんぐ)
 
「そういう時は長男に継がせるのが義理ってもんだろ? 無理に次男に継がせて家が滅茶苦茶になった例なんて、昔から腐るほどあるじゃないか」

「しかし、後妻が強く自分の子を推すのも、またよくある話でしょう? そしてこの長男が出来の良い息子だったから、なおさら後妻は嫌っていたようで。結局主人は、次男と相手の娘を引き合わせたそうです」

 大海は納得がいかないのか眉をひそめ、小夜は拳を握りはらはらしながら頷く。態度はまったく正反対だが、真剣に聞いている二人に、ますます行長の口は滑らかになった。

「ですが、相手の娘さんは次男ではなく、長男に惚れてしまったんです。長男の方も娘さんに一目惚れ、これが悲劇の始まりでした。次男は矜持をへし折られたせいで娘さんを酷く嫌い、婚姻などもってのほかと怒る始末。ですが長男が娘さんと結ばれれば、跡取りは長男のもの。それも次男は気に食わず、婚約破棄はしなかったそうです」

「そんな、次男さんが譲れば、誰も傷つかないで済むのに……」

「後妻が強く勧めるせいもあってか、結局娘さんは次男と結ばれました。そして長男は、遺恨の種になると近江を追い出されたんです」
 
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