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戦国ラブドール
第8章 紅天狗(べにてんぐ)
 
 行長は特に深く迫る事なく話を締めるが、大海は景色を忘れ考え込んでしまう。だが、突然辺りへ女性の叫び声が響き渡ると、一瞬で思考も吹き飛んだ。

 大海達はもちろん、町の人間全てが声のした方へ振り向く。と同時に、赤い頭巾を被った男達が反物を抱え、郊外へ走り去る。

「泥棒ーっ!」

 その言葉に反応したのは、正義感に溢れる市松と虎之助。赤い頭巾の男達を捕らえようと、厳しく睨み付けた。

「行くぞ、あいつらぶっ飛ばしてやる!」

 虎之助が真っ先に駆け出すと、市松は大海の腕を掴む。そして大海が声を上げる間もなく、大海を引っ張り自分も駆け出した。

「早く来い、逃げられるぞ!」

「えっ、ええーっ!?」

 あまりに唐突な行動に、行長や吉継はあっけにとられ固まってしまう。だが小夜の叫び声に、正気を取り戻した。

「お姉ちゃん!!」

 小夜は腰が抜けたのかその場に膝を付き、青ざめる。

「なんであの人、お姉ちゃんまで連れてくの……お姉ちゃん……!」

「お、落ち着いてください小夜さん、今すぐ私達が連れ戻しますから、ね?」
 
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