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戦国ラブドール
第8章 紅天狗(べにてんぐ)
泣きじゃくる小夜に肩を貸し、吉継と行長は歩き出す。だが、不安は拭えない。高虎が口走った『紅天狗』という無法者の集団。それは最近町を脅かす、質の悪い盗賊だった。
「ここ、どこなんだよ……」
市松に引きずられてしばらく、大海は一人、森の中をさまよっていた。
市松は勝手に大海を連れてきておきながら、足が遅い、後から追ってこいと言い残して一人先へ向かってしまったのだ。しかし土地勘のない大海がついていけるはずもなく、気が付けば森をさまよう事となっていた。
(町からはそう離れてはないはずだけど……どうしたものかね。あんまり下手に動かない方がいいか)
全力で走らされたせいか、着物は乱れ足も疲れている。ふと目を下に向ければ、おあつらえ向きに切り株がある。それは森に人が立ち寄った証でもある。人が立ち入れるという事は、獰猛な獣の縄張りではないはず。そう判断した大海は、切り株に腰掛け荒れた息を整えた。
だが、危険なのは獣だけではない。大海がそう気付く前に、背後から危機が迫っていた。
「お嬢ちゃん、珍しい髪の色をしてるねぇ」