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戦国ラブドール
第9章 犯す女
 
「孫六、お前は直接奴らの顔を見たんだな? 今から秀長様に報告へ行く、お前も同行してくれ。他の者はひとまず解散だ。市松、別に何か罰を与えるつもりはないが、反省しろよ」

 そして高虎は孫六を連れ、秀長の元へ向かう。子飼いはまだ半人前の身、秀長の下知を待つしか出来なかった。

 城の奥へ向かえば向かうほど、人の気配は少なくなる。高虎は不意に足を止めると、後ろを歩く孫六の方へ振り返った。

「そうだ、孫六」

 孫六は突然立ち止まった高虎を不思議に思いながらも、顔を上げる。

「火のついた香炉を後先考えず投げ捨てたら、危ないぞ。火事になったらどうする」

「――っ!」

 それは、普段の孫六の悪事を咎める言葉ではない。火のついた香炉を投げ捨てた経験など、そもそも一度しかないのだ。

「見ていたのか……」

 香に惑わされ、不実に染まった記憶。孫六の幼い顔に、朱が走る。

「俺が消してやったんだ、感謝しな。それと、せっかくの筆おろしを邪魔してやらなかった事もな」

 高虎のからかうような言い方に、孫六は一瞬で腹の奥が煮え立つ。思わず胸ぐらを掴むが、高虎はその手を捻ると、孫六を俵のように小脇へ抱えた。
 
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