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戦国ラブドール
第10章 市松の暴走
その上状況は、大海の言葉が真実だと示している。取り返しの付かない過ちに、市松は全身の血の気が引いた。
「悪い……お前には虎之助がいるのに、俺はなんて事を……」
「んー……その虎之助の事、なんだけど」
案の定落ち込む市松に、大海は罰が悪そうに切り出す。
「恋仲だってのは、あんたの誤解だよ。正確に言えば、そんな素振りを見せてただけ。別にあんたがそこまで気に病まなくてもいいよ」
「恋仲じゃ、ない? けどお前ら、孫六も放って二人でいたじゃないか」
「それは、虎之助が気を遣ってくれたんだよ。あたしが慰み者になるのが嫌だって言ったから、そういう振りをすればあんたはあたしに手を出さないだろうって。嘘吐いてたのはあたしだ、ごめん」
今度は大海が頭を下げるが、市松が大海を責める権利などない。慰み者を嫌がる大海の心情はもっともであるし、それを打ち明けられたら、虎之助は自分を頼れと言い出す気性である。むしろ市松に広がるのは、安堵感だった。
「なんだ……そうか、恋仲じゃないのか。はは、そうか……」
「けど、あんたが昨日した事自体は怒ってるからね。記憶がなくなるまで酔うなら、酒なんか飲むんじゃないよ」