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戦国ラブドール
第10章 市松の暴走
「違うよ、これはあたしが自分でやったんだ。くよくよと悩んでいた自分と決別して、成すべき事を見つけるためにね」
「だからって、わざわざ髪を切らなくてもいいだろうが! なんでお前は、思い込むとすぐやらかしちまうんだ」
「別にいいだろ。命と違って、髪はまた伸びるんだし。それより、市松だよ。あたしはもう先日の件なんかとっくに気にしてないから、あんたもいい加減に許してやっとくれ」
「いや、そんな事よりお前……」
だが、大海はまったく後悔している様子がない。いくら話したところで髪が元に戻るわけでもなし、虎之助はこれ以上の言及を飲み込んだ。
「――分かった。お前がいいって言ってるなら、俺がこれ以上怒る道理もないしな。けどな市松、お前本当に反省しろよ。こいつは気は強いし突っ走る奴だが、それでも女なんだからな」
「分かってる。すまねぇ、虎之助」
「大海、お前侍女の仕事もあるだろ。早めに行って、志麻に説明しとけよ。その姿を突然見せられたら、卒倒するぞ」
「ああ、そうだね。じゃああたしは、先に戻るよ。それじゃ、また」
大海は明るく手を振り、一人で戻っていく。短くなった髪を眺め、虎之助は溜め息を漏らした。