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戦国ラブドール
第10章 市松の暴走
「本当に、何考えてんだあいつは。ったく、一時たりとも目を離せないな」
虎之助の呟きが、市松の胸に刺さる。心から大海を心配し、嘆く姿。それは、恋する男のものだった。
「虎之助……」
「なんだよ、しょぼくれた声して」
大海は、恋仲なのは誤解だと語った。わざわざ嘘をつく理由はないので、それは大海の中で紛れもない真実なのだろう。だが、虎之助からすればどうなのか。わざわざ訊ねなくても、今の虎之助を見れば明らかだった。
今ここで、恋仲は誤解だったと語る理由もない。想いが通じ合っていようが片道であろうが、親友が女に惚れているのであれば、市松の取るべき行動は今までと変わらないのだ。
だが、応援してやろうと思えば、気持ちが沈む。素直に力を貸せなくなっている自分に、市松は頭を掻きむしった。
一方、ひとまず着替えようと自分の部屋まで戻った大海は、小夜の錯乱に慌てる。なんとか宥めた後も、すれ違う侍女にも同じように心配され、武士には驚愕の目を向けられ、志麻と対面する頃にはすっかり疲れ果てていた。
「――つまり、この地に骨を埋める決意の現れだと、そう言いたいのね」