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戦国ラブドール
第10章 市松の暴走
志麻は正座し膝の上に置いた拳を震わせ、腹の奥からやっと声を出す。大海が頷けば、頭を抱え長い溜め息を吐いた。
「まったく……なんて無茶をするんですかあなたは。決意など、心の中で済ませればそれでよいでしょうに。いいですか、あなたは真面目だと思いますが、少々思慮が足りません。そのような心持ちでは、いつしかおねね様にご迷惑を――」
説教が始まったと大海が肩を縮めれば、突然部屋の扉が開く。中へ入ってきたのは、誰も予想だにしていなかった人物だった。
「よう、志麻! 今帰ったぞ」
「ひ、秀吉様!」
部下もつけず、ただ横に一人見慣れない女をはべらせて、秀吉が中に入ってくる。
「戻られるなら、一報入れてくださればよかったのに……大殿は、いかがでしたか?」
「ああ、問題ない。今度は中国攻め、毛利討伐よ。それより」
秀吉は大海の前に立つと、まじまじと見つめる。そして、何の線に触れたのか、その瞬間大笑いした。
「ひゃはははは、お前、どうしたその頭! まさか、そんな頭で再会するとは、ははははは!!」
「笑い事ではありませぬ、秀吉様! この娘、仕事は真面目ですが、気性が荒くて困り者なのです」