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戦国ラブドール
第10章 市松の暴走
正直に答えよと言われても、相手は身分の違う秀吉である。本当に思うまま答えたら、失礼ではないかと迷う。だが、嘘を好まないのが大海の性分、しばらく考え込んだが、秀吉の言う通り正直に答えた。
「小夜を陵辱したあなたを、許す事は出来ません。正直にと言われれば、ただ憎いばかりです」
「ほう」
「――しかし、分からない事もあります。そんなあなたを、この城の皆は心から慕い忠義を捧げています。城下町の人間も皆、生き生きと暮らしていました。芯から暴君であるなら、皆から好かれる事はないでしょう」
大海が続けた言葉に、秀吉は一瞬目を丸くする。だがすぐに頬を緩めると、穏やかに頷いた。
「嫌いだと思う感情は、一生変わりません。しかしだからといって全てを否定するのも、道理に合わないと思います。ですから……どう思うと言われますと、よく分かりません」
「そうか。嘘偽りなく答えてくれた事、感謝する。それで良いのだ、拙者が上の立場だからと媚びるような人間は、信用ならん」
秀吉は怒るどころか、清々しく笑みを浮かべている。猿のような、どこか親しみのあるその表情。それは、警戒する心を緩ませる。