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戦国ラブドール
第10章 市松の暴走
さくやは怯えた目で下がり、立ち去る。秀吉は閉まる襖を眺めながら、ぽつりと呟いた。
「あの女子、よくよく見れば背丈は半兵衛と同じだな。ほら、長くて綺麗な髪もそっくりだし、いざとなれば影武者も」
「いくら背格好が似ていても、あのような鼻につく甘い香りを漂わせていては、話になりません。下手な軽口で誤魔化そうとしても、私は騙されませんよ」
場を去っても、部屋に残る女の甘い香りはなかなか消えない。侍女として雇われたにしては、さくやは色気を出し過ぎている。半兵衛はそれを、あまり快く思えなかった。
「侍女の事はまた今度説教するとして、今は中国攻めの話です。どうして私を、評定へ呼ばなかったのですか」
秀吉は大海との対面を終えた後、信長の命である中国攻めへ向けて評定を開いていた。しかし半兵衛はそれに呼ばれないどころか、ただ面会する事も叶わず放置されたのだ。
「長篠での戦をお忘れですか。私が秀吉のためにどれだけ策を出したのか、知らぬとは言わせません」
「……半兵衛」
秀吉は怒気を隠せない半兵衛に、負けじと冷たい目を送る。